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業界の動向

規制緩和と自由化

 東西冷戦の終結に端を発し,その後この数年のInternetの急激な普及によるあらゆる情報のボーダーレス化などが加わり,経済のボーダーレス化が誰も予期しなかった勢いで今進んでいます.これに伴い,経済の血液といわれるmoneyにかかわるあらゆる金融関連の産業で世界的に地殻変動が起きつつあります.

 我が国の損害保険業界でも,今年7月から自由化することが一昨年の日米保険交渉で決められております.よく言われるように,我が国の経済はお上による“戦時統制経済”の影を色濃く残しております.これはこれで,戦時中にはもちろんの事,戦後の復興にも大変効率よく機能し,その限りにおいては日本の官僚は確かに優秀であったと言えます.

 しかし,一つには民間の企業が世界を相手に活躍できるほどに十分に力をつけ,同時に経済のボーダーレス化により我が国経済だけが“特殊共同体”である事が許されなくなりました.

 週刊ダイヤモンド97年3月31日号では,損害保険業界を“最強の護送船団”と評しております.護送船団は,船がバラバラにならないように,常に一番遅い船に速度を合わせます.これは,一番体力のない保険会社に,商品も値段も合わせる事を意味します.みなさんにもっとも身近な,自動車保険・火災保険・傷害保険などは,どこの保険会社で買ってもまったく同じ内容・同じ値段だったのです.一番体力が弱く,一番効率が悪い会社でも利益が出るように価格が設定されているのですから,上位の会社は自ずと採算が取れるようになっておりました.

 それが自由化されたなら一体どういう事になるのか? 誰にも予測のつかないのが実状です.上記のダイヤモンド誌では,少なくとも10%安くなれば半分くらいの会社が赤字になり,15%安くなると東京海上以外は赤字になると予測しております.外資系の保険会社がどのように出てくるかでも大きく変わるでしょう.言える事は,中・下位の保険会社のかなりのところが今のままでは立ち行かないという事です.合併や縮小あるいは得意分野に特化するなど色々でしょうが,具体的にどの会社がどうなっていくのかは誰にも予測のつかない事でしょう.

 ここまでお読みになられて何か感じられたでしょうか? 代理店の事をまったく申し上げておりません.日本の損保業界というのは,厳密には“損害保険会社業界”と,それに隷属する“代理店業界”に分かれており,長い間,代理店は保険会社から蔑視されてきました.数年前まで全社統一のフォームで使われていた“代理店業務委託契約書”の文言は,徹底して代理店性悪説,放っておけば必ず悪い事をしでかすのだという事を前提に作られておりました.そのような環境の中で,当社は一貫してリスクマネージメントを標榜し,誇りをもって今日まできました.日本の保険会社は原則として代理店制を敷いており,顧客の現場のリスクを扱うのは我々代理店であり,保険会社はその結果の保険をあつかうにすぎないという,リスクに関するプロとしての誇りです.

 さて,その代理店業界はどうなるのでしょうか? これもまた予測のつきにくいところですが,保険の通信販売が認められ,同時に保険料が自由化されると個人の優良な契約者のかなりの部分がそちらに流れ,あまり有効なサービスを行ってこなかった副業代理店や零細代理店は相当程度淘汰されるだろうといわれております.当社の場合は,契約者の大部分が企業及びその企業に関連される方々で,競争相手が減る分だけ有利になると読んでおります.しかしこれとても,果たして正しい見通しだという保証はありません.それでも「いつどんな場合でも自分たちの顧客・自分たちの市場を確保しているものは必ず勝ち残る」という競争原理の上に立って,今まで通りの事を地道に続けるだけの事です.ただし,7月1日以降の自由化により,ダンピング競争の影響は相当受ける事もありうるという警戒と覚悟はしております.

 私たちが自信と誇りをもってやってきたのにはそれなりの訳があります.保険の先進国アメリカでは保険会社よりもブローカーの方が健全で力があるという実態を知っているからです.昨年,世界第2位保険ブローカーであるマーシュ・アンド・マクレナン(通称;M&M)が同5位のジョンソン・アンド・ヒギンズ(同;J&H)を買収しました.どちらも日本の保険会社の数倍の規模を誇っています.ちなみにその買収金額が,J&Hの1年分の手数料収入と同額ということで18億ドル,現在の為替レートで換算すると約2300億円になります.手数料(commission)で2300億円ということは,取り扱い保険料で2兆円ぐらいになると思われます.これが買収された側の第5位のブローカーだという事ですから,多分皆さんの想像を超えている事と思います.例えばマーシュ・アンド・マクレナンにはTechnical Departmentがあり,そこには鉄鋼だとか石油産業だとかの業種別にリスクを判断するプロが多数おり,独自に保険の引き受けのアイデアレートを出して保険会社と折衝したり,時には顧客にリスクについてのアドバイスをしたりします.当社もたとえば中小の工場や運送業者・国際物流・地方自治体などのリスクには永年にわたって蓄積された経験とノウハウがあります.規模は違っても所詮は人間のやることだから同じような事ができるはずだと考えております.

 このような巨大ブローカーは,今までは日本の市場で,規制を守り,我々と同じ代理店として活動していました.それが自由化によってどのような動きを展開するのかは予測のつきにくいところです.  ただし,このような巨大ブローカーは.最低でも数千万円ぐらいのロットの保険しか扱わないために,当社とぶつかるという事はまずありません.現に日本のオフィスのトップの方々とは時々食事などをともにしております.

 少々話が拡散しましたが,国内では今年7月から始まる自由化本番に向けて事態は混沌としており,国外ではウルトラ級のブローカーが誕生し,しのぎを削り始めようとしているという事です.


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